机と本棚 作:GLUMip このベッドや本棚は、すべて俺のために秋子さんが用意してくれた物らしい。 「祐一さんは家族の一員だから」 そこまでしてくれなくてもよかったのに…と言った俺に、秋子さんが穏やかに微笑んでいた。 これは口には出せなかった話だが… 本棚に面した机の足が板になっていて本棚を隠している。 この奥に本を入れたが最後、取り出すのは至難の技だ。 かといって、本棚を左に動かすと窓を塞いでしまい、格好が悪い。 机を窓に持っていってもおかしいし、別の場所に移すほどのスペースも無い。 つまり、俺の部屋の配置は絶妙なバランスで成り立っているのだった。 計算された空間。崩せない空間。 死角となった本棚の片隅は、どうやって使うのか。 頭を抱えるがとても答は出てこない。 「くそっ、ちっともかたづかない!」 思わず悪態をつくが、だからといってどうなるわけでもない。 俺は頭を抱えて座り込んでしまった。 階下では、丁度秋子さんが夕飯を作っているところだった 二階から祐一の悲鳴ともつかぬ声が聞こえてくる。 スープを一口すすった秋子さんは、一瞬笑みを浮かべたようだった。 おわり