#Kanonとデジキャラットのミックスパロディー。 アニメのデジキャラット「ぶきみぶー」を御存知の方のみお読みください。 DiGiMakot「ぶきみぶー」 作:GLUMip 東北の秋葉原と呼ばれるこの町を二人の男が闊歩する、 男達は軽やかに、そして楽しげに歌を口ずさむ。 「ぼーくたーち真琴ちゃんのファーンなーんでーす」 二人の声は青空に響いてゆく。 歌のとおり、二人は真琴のファンを自認していた。 太った男と、痩せた男。 対称的な外見をしている二人たが、真琴を愛する心は一つであった。 ついでに言えば、二人とも真琴グッズを身につけている。 二人の青々と髭の跡やアニメグッズにまみれた外見は初対面の人に 若干の抵抗を抱かせるものであったが、彼らの心を一目覗くことが できたならば誰もが彼らと打ち解けるに違いなかった。 そんな二人が奇妙な世界に足を踏み入れるところから、かかる悲劇、 いや喜劇が生まれたと誰が想像しえたであろうか。 非情にも、物語は始まるのであった。 いつもの如く歌いながら街を歩く二人の前に、それは存在した。 「あっ!尻尾だぁ!」 太っちょが目ざとく路上の毛を発見する。 「真琴ちゃんの尻尾だァ!」 ヤセの眼力もなかなかにして鋭い。 その毛並み、色艶からして憧れの真琴の尻尾である事を瞬時にして察知する。 何という幸運か。二人が愛して止まない真琴の尻尾との巡り合わせは 二人と真琴との素敵な運命を予感させた。 しかし、目の前の闇を二人は知らない。 思わぬ路上の出会いに浮かれる二人が、それ故に視野狭窄に落ち入ってたとて 誰が非難できようか。彼らは幸せであるが故に、その先の罠に気づかなかった。 すなわち、彼らの前方には暗闇が口を開けて待っていたのである。 大地に忽然と現れた半径2m程の円。覗き込めば底知れぬ闇の奥底から 不気味な冷気が流れてくる穴が、彼らの行く手に待ち構えていたのである。 真琴ちゃんになんて言って返そうか、尻尾が返ってきたら真琴ちゃんはどんなに喜ぶか… その先の不幸も露知らず、ヤセと太っちょはもはや夢うつつである。 「あっ!」 「あぁっ!」 しまった、と思った時には既に遅い。 二人の体は宙に舞い、果て無き奥底へと自由落下を始めるのだった。 闇の入口に「地獄屋↓」との看板が掲げられていたことに二人が気づいたかどうかは、定かでない。 彼らが奥底に降下すると地獄屋の店主とおぼしき人物が、二人を凝視していた。 青みがかった肌に金の髪、地獄屋の名の由来は恐らくここにあるのだろう。 店主はふいの来店にも驚かず、簡単に来店の歓迎を告げた後、単刀直入に要件を訴えた。 「その尻尾、お譲りいただけませんかねぇ」 あまりの要求に二人は顔を見合わせた。 飲めるはずがない。正当な持ち主である真琴に返すのが道理。 何故に尻尾を手放さなければならないのか、理由などあるはずが無かった。 二人の表情がこわばるのを見て取った店主はすかさず条件を提示した。 誰もが心動かす、魅力ある条件であった。 「お譲りいただけたら、願いを何でも叶えましょう」 再び、二人は顔を見合わせた。 太っちょの顔にも、ヤセの顔にも明らかに動揺の色が伺える。 互いの目が互いの胸のうちを探り始めた。 にわかの沈黙。 金色の髪を風になびかせながら、店主は彼らを見据えている。 これ以上の好条件はあるまい? 店主の髪が自信を表しているかのようだった。 しかし、彼らの決意は固かった。 「これは真琴ちゃんに返すんです!」 髪を風になびかせていた店主の表情がにわかに掻き曇る。 かと思うと一転して怒気をはらんだものになった。 「それではこのままお返しできませんねぇ!」 「ええっ…」 怒りに満ちた店主の一喝に、二人は戦慄して顔を見合わせた。 水瀬家では真琴が箸を握り締めて呆然とたたずんでいた。 「あうっ、あうっ…」 妖力の源である尻尾が無くては箸を持つことすらかなわない。 「あう〜」 真琴はすぐに泣き顔になる。人として生き続けることの限界を見てしまったのだ。 「あうっ、あうっ…」 再びの嗚咽。とめどなく涙が溢れては床に水溜りを作ってゆく。 そこへ… 上から二人が降ってきた。 「真琴ちゃん!!」 「あう?」 「尻尾だよ!!」 二人の格好はボロボロであった。 しかし、二人が必死の思いで守った尻尾は無傷であった。 「あう…あー!」 泣いていた真琴の表情がみるみるほころんでゆく。 二人は自分たちの選択が正しかった事を確信した。 真琴は尻尾を握り締めて無邪気にはしゃぐ。 二人は疲れきっていたが、しかし輝いていた。 「真琴ちゃん…僕の名前はたけし」 「ボクはよしみっていいます」 まだ名乗ってもいなかった。 ファンとして、真琴に名前を知ってもらえるのは夢であった。 太っちょ…いや、たけしは『武』と書かれた紙を持った。 ヤセのよしみも『喜美』と書いた紙を持ち、真琴に覚えてもらおうと必死である。 「あうー」 武は真琴に優しく教える。 「た・け・し」 「あう?」 「た・け・し」 真琴は困ったような顔をして紙を見た。 『武』 「…ぶ?」 慌てて武が否定する。 「た・け・し」 「た…?」 「そうだよ真琴ちゃん!た・け・し」 再び真琴は紙に目をやった。 『武』 「ぶ?」 武は辛抱強く自分の名を繰り返した。 「たー・けー・しー」 「たー」 真琴が答える。 武は顔をほころばせたが、真琴は再び紙に目を走らせた。 「ぶ?」 武は悲しくなってきたが、それでも自らの名を繰り返す。 「たーーーーー・けーーーーー」 真琴は首を傾げた。 「ぶ……た…?」 太っちょの武はガックリとうな垂れた。 真琴は嬉々として紙を眺めた。 「ぶ!」 一方の喜美の持っている紙を見る。 『喜美』 紙にはそう書かれていた。 真琴は眉をひそめながら必死で文字を読もうと努めた。 「き…み?」 真琴にはそう読める。 真琴はさっき読んだ言葉を続けてみた。 「ぶ…き…み!?」 うまく言えた。 「ぶきみっ!ぶきみっ!」 真琴は指をさして覚えたばかりの言葉を繰り返した。 「ぶきみっ!ぶきみっ!」 武と喜美はただただうな垂れるばかりであった。 窓の外は冬景色。 外で吹きすさぶ風よりも冷たい風が、二人の間を吹きぬけていった。 #まめちしき DigiMakotこと真琴ちゃんの必殺技は 目からビームの代わりに尻からエキノコックスなんだ! 10年近くの潜伏期感を持つ遅効性の必殺技だよ!すごいね! おわり