Kanon開発秘話 作:GLUMip ずっと影を追い続けていたのかも知れない。 もう、だいぶ昔の話だ。 小学校の頃、好きだった人が木から落ちて・・・ 7年間ずっと寝たきりで・・・ 俺が高校生の頃、息を引き取った・・・ そんな悲しい思い出・・・ そう、あれは確かに初恋だった・・・ 俺はいまだにあの影を追っているのだろう。 夕焼け雲の下に伸びる、長い影。 あの子の面影を、今も・・・ 「相沢、今度の企画は自信作なんだって?」 悪友の北川と行く、JRのガード下にあるいつもの店。 「ああ、この企画だけは絶対に成功させるさ」 ずいぶんな自信だなと北川が笑う。 「あの子の事を書くつもりだ・・・」 ふいに北川のグラスが止まる。 北川はそうか、とただ一言つぶやいてグラスを傾ける。 溶けかけた氷が小さく音を鳴らした。 「成功、させろよな」 「もちろんだとも」 北川はもう一度グラスを傾けた。 カラン、と氷がつぶやいた。 半年の後、俺の企画したゲームが完成した。 名前を、Kanonという。 多少の脚色はしているが、少なくとも俺の担当部分のシナリオは体験に基づいている。 たい焼きが好きだったあの子。 幼くして死んでいったあの子。 そんなあの子とまた巡り会えるという… 叶わぬ願いをゲームに託して… このゲームがはやれば沢山の人があの子の格好をするだろう。 もしかしたら、その中にあの子がいるのではないか… そんな夢を見ながら… 俺は、今も影を追いつづけている。 おわり