咆哮 作:GLUMip 「最後は笑顔だったよな・・・あゆ」 急速に冷えゆく両の手を見つめながらも、俺は暖かな気持ちに包まれて・・・ 「包まれるわけがなーい!!」 夕暮れの時間は過ぎ、夜のとばりが下りた森の中に絶叫がこだまする。 「あゆあゆあゆあゆあゆーっ!」 俺は切り株をドンドンと叩き、力の限り叫ぶ。 「あゆーっ!」 「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿―ッ!」 付近の木々に思いっきりこぶしを打ちつける。 枝に積もっていた雪が音を立てて落ちてきて、俺の頭から足までを真っ白に染め抜いた。 「ちくしょーッ!」 木の幹に頭をぶつける。これでもかこれでもか。 「うぉぉぉぉぉぉーっ!」 再び闇を裂く咆哮。 辺りを駆けまわっては木々にキックをお見舞いする。 手の皮は破れ、、ズボンは引き裂け、踏み荒らされた雪の大地に赤い血が点々と染み込んでいく。 「うがぁー!!」 雪の上に身を投げ、ごろごろと転がった。 「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう・・・」 ほとばしる涙。流れる血潮。ぬぐわなかった。そのまま流れるに任せていた。 雪で赤くなった頬を、涙とも鼻水ともつかない流れが伝ってゆく。 「あゆ・・・あゆぅ・・・」 情けない声をあげる。そのまま突っ伏しておいおいと泣きじゃくる。 「みっともなくて見ていられないよっ!」 木の影から声がした。 あゆだった。 俺と同じ、涙と鼻水でグチャグチャの、すごくみっともない顔だった。 おわり