絵画の謎 いつもの場所で、いつものように。 秋子さん御自慢の手料理を食べながらとりとめのない話をする。 そんな日常こそが、幸せなのかもしれない。 「前から気になっていたんですけど、あの絵どうしたんですか?」 「落穂拾いですよ。祐一さんも御存知でしょう!?」 壁の絵を振りかえりながら、秋子さんが答える。 美術の時間に習ったから、落穂拾いくらいは俺でも知っている。 「レプリカでももらったんですか?」 とりとめのない話、そのはずだった。 「本物です」 「え?」 瞬間、絶句する。 おそらくは冗談なのだろう。 しかし、秋子さんの目に宿る真実の光は、俺の推測を大きく揺さぶるのだ。 いや…あの秋子さんなら… 「早く食べないと、冷めてしまいますよ」 考えに夢中で、すっかり箸が止まっていた。 …この時気づくべきだったのだ。 手にしていた食器が、美術の教科書に載っていたのとそっくりであることに。 おわり