背中のかね 作:GLUMip 「…ところで、このかねは何なんだ?」 「…かね?」 不思議そうに首を傾げている。 「かねって、なに?」 俺の言っていることが分からないというふうに、顔に『?』を浮かべる。 「背中についてるだろ?」 「背中…?」 首を傾げたままの体勢で、自分の背中を見ようと後ろを向く。 「…かね〜」 …が、当然後ろを向くと背中の金は前に来る。 さらに自分の背中を追いかけるように、右回りにくるくると動く。 「…うぐぅ」 自分のしっぽにじゃれつく子犬のように、その場でくるくると回転する女の子。 「…うぐぅ…見えない」 もしかするとそうではないかと薄々思っていたが、今なら断言できる。 こいつは変な奴だ。 間違いない。 「とりあえず、首だけ動かして背中を見てみろ…」 言われた通り、覗き込むように自分の背中を見る。 「…あ、ホントだっ」 無邪気に顔をほころばせる。 「金があるよ〜」 「たくさんのお金〜」 …やっぱり変な奴だ。 「で、何なんだこれは?」 触ってみて途端に後悔する。 女の子の背中の袋いっぱいに詰まった、金。 とても合法的に入手できるとは思えない大金をどうやって入手したのか。 問いただす勇気は、しかし、失われていた。 おわり