涙のプレゼント 作:GLUMip あたしに妹なんていない。 妹なんて見えない。 妹なんて、最初からいなければ良かった。 こんなことを考えるあたしは、姉なんかじゃない。 だから、姉になんてなりたくなかった。 姉にならなければこんなに辛い思いをせずにすんだのに。 …栞の限界とされた2月が過ぎ…明日の朝、カレンダーをめくればもう3月だ。 3月1日… 2月1日から既に1ヶ月。 栞は一層痩せてしまい、あたしは食卓を一緒に囲むのも辛かった。 だからあたしは一人で食事をとることにした。 それまでは、視界に入れないように努めていれば良かっただけなのに。 それすらも、今のあたしにはできなかった。 今年はうるう年で2月が一日多い。 だからどうって訳でもないんだけど。 栞が1ヶ月生き延びようとするのを阻んでいるみたいで、嫌な気がした。 だからってどうなるわけでもないんだけど。 あたしは姉失格だ。 だから、あれは妹でもなんでもない。 最初から妹なんていなかった。それだけのこと。 あたし達は夢を見てしまっただけ。 何も見たくない。 何も考えたくない。 あの子が不安げに私の顔色をうかがう姿も、目に入れたくない。 嫌な気分。こんな時は早めに寝るに限る。 目覚めれば、きっと…忘れられるはず。 そう信じて眠りにつくことができるから。 ………。 ……。 …。 ぼんやりとした頭に朝の日差しが眩しい。 庭に積もった雪が陽光を反射して窓を白く光らせている。 ああ、爽やかな朝。 顔を洗いに部屋を出ようとすると、ドアの脇に小さな包みがあることに気が付いた。 小さな包みに、これまた小さなカードが添えられている。 『お姉ちゃん、誕生日おめでとう』 あたしは久々に泣いた。 ダイニングで食事をしていた栞に抱きついて、泣いた。 「ごめんね…栞…馬鹿なお姉ちゃんでごめんね…」 …その日から栞は快方に向かった。 あの時のプレゼントは今も大事にとってある。 おわり