悩み 作:GLUMip 「まったく…一つも悩みがないって顔をしているわね、名雪は」 土曜日の学校は半日で終わり。 教室に最後まで残っていたあたしたちはこれから百花屋へ行くつもりだった。 「わたしだって悩みぐらいあるよ〜」 名雪は少しむくれた顔をしてみせる。 「香里…聞いてくれる?」 …名雪が悩み事なんて珍しい。さては相沢君のことね… どうしたのと聞くと、名雪は手招きする仕草をして小声でつぶやいたの。 「祐一ね…夜が激しくて困っているんだよ…」 な…なななななっ! あの奥手というか、世間知らずというか…一番こういう世界と無縁に思えた名雪が… ああ、あたしもう駄目。倒れそう。 でも考えてみれば当然よね。 恋人と一つ屋寝の下。 毎日一緒に暮らしていれば当然そういう事もあるわよね。 名雪だから…と思っていた自分が恥ずかしいわ。 でも…そう…あの相沢君が名雪とねぇ… 親友の幸せを祝ってあげたいけど、なんだか大事な所で先越されたみたいでちょっと悔しいわ。 でも、こういう時にこそ力になってあげるのが親友よね。 それにこの話…興味が無いといえば嘘になるしね。 「それで…その、相沢君は…その…」 話題が話題なだけに単刀直入には聞きずらいわね。 なんて言ったらいいかしら。 そんな風に悩んでいると先に名雪が切り出してきたの。 「祐一ったらひどいんだよ〜」 あら、どんな風に酷いのかしら。 「わたしのことポカポカぶつんだよ〜」 相沢君ったら意外と亭主関白なのね。それとも変な趣味があるのかしら。 「この前だってね、わたしの頭叩いて『寝るなっ!』って…」 「ね、香里。ひどいと思わない?」 おわり