奇跡の値段 作:GLUMip 名雪と一緒に登校してこの時間に学校に着くなんて、まさに奇跡と言える。 「あんた達の会話を聞いていると奇跡が安っぽいものに思えてくるわ」 何が不満なのか、香里は溜息をついた。 「どれ位安く思えるんだ?50円くらいか?」 軽くギャグをかました途端、香里の髪の毛が逆立ち始めた。 「あ…相沢ぁぁぁぁっ!」 空はにわかに掻き曇り、冬だというのに稲光りが天空を駆ける。 怒髪天を突くとは、まさにこのことだった。 怒りの表情を崩さぬまま、香里はポケットに手を入れる。 やがて取り出されるメリケンサック。 それを左腕に付け、香里は顔の前で両手を突き合わせて威嚇する。 「す、す、す、す、す…すまなんだ、香里の姉御っ!」 制止を求める俺の声は悲鳴に近い。 「姉御っ!いや…香里様っ!どうかお許しをっ!」 しかし、一度火がついた香里を止められるのは誰もいなかった。 手を打ち鳴らしながら殺気の塊と化した香里が一歩、また一歩と迫ってくる。 「香里…話せばわかる!」 「問答無用!」 顎の骨が砕ける音と共に、俺の体が宙を舞ったのは言うまでもない。 おわり