ロシアンティー 作:GLUMip ロシアンティーですよと言われて階段を降りてみると、 テーブルの上には6つのティーカップが並んでいた。 「好きなのを選んでくださいね」 …どういう意味なのだろう。 名雪はと見ればカップの一つ一つを凝視しては首を傾げている。 ジャムの浮かんだ紅茶の甘い香りが鼻腔をくすぐる。 俺は誘惑に負け、手近なカップを手にとって口にする。 そのカップは、唯一甘い香りを放っていなかった。 「ぐぁっ…」 鈍い悲鳴をあげて、そのまま倒れ込む。 焼ける、喉が焼ける! 助けてくれ!名雪!名雪っ… もはや声にならなかった。 一方の手で喉を押さえ、他方の手は名雪の方へと助けを求めて差し出すが、 苦しげに伸びた手はひたすらに痙攣しているのだった。 名雪はほっとした顔で俺を見下ろした。 同情の色は伺えない。ただ、安堵と、勝者の余裕の笑みが存在するだけだった。 …そんな…名雪… 薄れゆく意識に追い討ちをかけるかのように名雪の声が聞こえてくる。 「勝った…おかあさんのロシアンルーレットティーで…」 …秋子さん、ルーレットは余計です… がく。 おわり