時計のない生活 作:GLUMip あの年の一月下旬だったろうか。 それまで身につけるのを嫌っていた時計を左腕に巻くようになったのは。 この時計は栞と一緒の時を刻んできた大切なものだ。 一時はどうしたものかと思案にくれたが、結局しまっておくことにした。 夕方、栞に会うと俺の腕に時計がないことに気がついたらしい。 人差し指を唇に当てて壊れちゃったんですかと聞いてくる。 まぁそんなところだと適当な返事をするとわかったような困ったような表情をしていた。 翌日、栞との待ち合わせ場所にはかなり早目の時間に行くことにした。 ベンチに腰掛けると向こうから走ってくる栞の姿が見える。 どうやら俺の方が間一髪の差で早かったらしい。 まだ約束の時間には30分もあったのだが。 見ると、栞の腕には小さな時計が付いている。 しかもしきりにそれを気にしているようだ。 もう、栞も気づいているらしい。 さて、そろそろ告白せねばなるまい。 次の俺の誕生日が… おわり