とこかのスタッフ放浪記 あぅー、疲れたよー。 …なんてことは、入口担当たるもの決して口にしてはならない。 何故なら、入口担当は全員あゆらー(あゆ愛好家)で構成されており、 あゆの他、各人一人一キャラまでの特例承認キャラ以外の口癖を使った場合は 即、転向者とみなされて糾弾追放されるのである。 つまりあゆなゆ派として、名雪を特例承認されている自分の場合は「あうー」等という言葉は 絶対口にできない。(つまり「そんな事いう人、嫌いです」と口にしたのは明らかな失策なのだ) 余談ではあるが、秋子さんらぶらぶ連合を自称する館内担当ゲート班系では 「特例了承」と称しているのは言うまでもない。 しかし、それにしても疲れてきた。時計を見ると、心なしか全然時間が進んでいないように思える。 「うぐぅ…疲れたよ…」 …言ってから思うが、こんなのあゆじゃない。 「うぐぅ…」 あれ、誰か俺以外にも「うぐぅ」と口にしている奴がいるな、班長かな。 …そう思ったが、ずいぶんと可愛いうぐぅだ。 よくよく聞いてみると可愛いうぐぅと野太いうぐぅがハーモニーを奏でている。 可愛いうぐぅはともかく、野太いうぐぅはあんまり聞きたくない。 声のほうに顔を向けると、赤いカチューシャが目にとまった。 うぐっ!もしかして、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あゆタン!? うわぁー!!あゆだあゆだあゆだぁぁ!! 頭なでくりまわして一緒にたい焼き食べて、えっとえっと… それはともかく、あゆぅ〜!! 俺はなりふり構わず駆け出していた。 さっきまで「走っちゃ、だめだよ」と名雪っぽく言っていたのに! いやしかし、あゆを目の当たりにして走らぬ男が漢と言えようか! (注:スタッフ失格です) はぅー、背中の羽リュックもいと可愛げに!くっはぁー(感涙) おっといけない、思わず口から魂を大気圏に放出するところだったぜ。 あゆを前にして天国に行っては本末転倒だ。 …って、待てよ、なんでここにあゆが… 俺に会いに来たのならともかく、列に並んでいるのはおかしいじゃないか… って、なにー!?なんかあゆちょっと大人過ぎですよ!? これって、コスプレじゃん! カチューシャ姿の女性を前に、思わず口をついて出る非難の言葉… 「うぐぅ、偽物だよっ!」 …と、横から野太いうぐぅの持ち主…ウチの班長が横槍を入れる。 「うぐぅ、ひどいよ、ボクはあゆだよっ!」 お前なんかあゆじゃないやいと思ったが、どうも違うらしい。 横にいるコスプレイヤーを指して「あゆ」だと言い張っているようだ。 「うぐぅ。班長!このイベントはコスプレ禁止でしょう!なにを是認しているんですか!」 「うぐぅ、祐一君。貴様あゆに向かってなんたる暴言をっ!」 「うぐぅ。班長が規則に逆らってどうするんですかっ!」 「うぐぅ、祐一君。貴様ダッフルコートにカチューシャのどこがいけないと抜かすんだよっ!」 …しまった、冷静に考えてみれば、これって普段着だからOKなのでわ… 致命的大ピーンチ。あの班長に真正面から突っかかってしまった俺の運命やいかに!? コスプレあゆの背中の羽が悲しげに揺れる… ちょっと待てよ。この硬質の羽って、禁止事項に引っかかるのでは!? 班長の手もとのカタログをひったくってページをめくると…あった。 「混雑時に他人に怪我をさせる恐れのあるチェーン類や強化プラスティックの…(中略)…禁止します」 これだ。 「うぐぅ、ちゃんとここに書いてあるんだよっ!」 「うぐぅ、なんだと貴様。あゆに逆らうのか」 …こう言われてしまっては、言い返す事ができない。 「うぐぅ、貴様あゆを愛する漢として、あゆの入場を阻む道理があるか!?」 …コスプレがいると、イベント自体が特殊なものとして奇異の目で見られ、 会場が借りにくくなるから禁止という理由があるのだが、 こういう人にそんなこと言っても効果が無いような気がした。 班長がこうではどうしょうもない。 さゆりすと同盟の誓いで結ばれた館内担当外周警備班に簡単に摘発されそうな気もするが、 まぁ、その時はその時か。泣いてくれやあゆモドキ。 俺はそう思って二人に背を向けた。 前を見た俺の瞳に映ったのは… あ…あゆあゆぅ〜!! 俺はたまらず走り出した。 俺はあゆよりもあゆあゆの方が好きで好きでたまらないのだ。 つづく