夢 作:GLUMip 「でも、また会えたな」 「だって、腐れ縁だもん」 忘れ物のリュックと人形を渡し、あゆを見つめなおす。 本当に好きな人。7年前のあの日から、ずっと、ずっと・・・ あの日から、あゆはずっと待っていた。 長い間一人で、ただひとつの希望を信じて。 今度は俺が待つ番になる。 おそらくは、永遠に。 しかし、俺は待つのだろう。 人形を握り締めて2度夕日を眺めたように、 思い出を抱きしめてこれからもあゆを待ちつづけるに違いなかった。 「約束したからな。3つだけ願いを叶えるって・・・」 「だから、せめて・・・」 消え入りそうな言葉。 あゆの願いを聞いたら、これが本当に最後になってしまうとわかっていると、 とても言葉が出てこない。しかし、最後の勇気と気力を振り絞って、俺はあゆに向き直った。 「俺に、最後の願いを・・・」 最後のお願い・・・7年間、大切にとってあった、最後のお願い・・・ 大事な大事な、俺とあゆとの、絆・・・ 「わかったよ。最後のお願いは、祐一君にあげるよ・・・」 あゆの言ったことは意外だった。 「今度は、ボクがお願いかなえてあげるよ」 俺は一瞬戸惑ったが、すぐにこれが絶好の機会だと〜そして最後の機会だと〜理解した。 「本当に、どんな願いでもいいのか?」 「もちろんだよ」 「本当にほんとか?」 「本当にほんとだよ」 「本当に本当にほんとか?」 「本当に本当にほんとだよ」 「だったら・・・。」 「俺の・・・願いは・・・」 風が吹いていた。 あゆの髪が静かに揺れていた。 「目が覚めたら、全部夢だった事にしたい」 「あゆが木から落ちた事も、今、あゆがこうして空に浮かんでいる事も、な」 あゆは・・・黙っていた。 「こんな願い・・・意地悪・・・か?」 風が・・・吹いていた。 「祐一君・・・」 あゆは俯いていた。 「本当にそれでいいの?」 「ああ、結構だ」 「わかったよ・・・」 そう言ったあゆの顔は笑っていた。 ・・・しかし、どこか悲しげに見えた。 ジリリリリリリリリリリリリリリリリ・・・ 目覚ましを止めて俺は起きあがった。 右手のほうに、食べかけのカップラーメン。 左手のほうに、転がった目覚まし時計。 パソコンのモニターはつけっぱなしだった。 KEYのロゴが桜吹雪に包まれて、一晩中輝いたままになっていた。 やっぱり自分の名前にして遊べばよかったな。 そうつぶやいて俺は土日で伸びた不精髭を剃り始めた。 今日からまた、会社かぁ・・・ おわり