秋子さんの2000円札
作:GLUMip
名雪も秋子さんの仕事は知らないらしい。
俺は名雪をせっついて秋子さんから仕事を聞き出そうとしたが、
名雪のしょぼくれた顔を見ると結局は失敗に終わったようだ。
俺も聞きにいったのだが…
「企業秘密です」
…やっぱりなぁ。
「ヒントをあげましょう。手先が器用で、細かい作業が出来て、気が長くないと出来ない仕事ですよ」
…さっぱりわからん。
細かい作業で気が長くないと出来ない仕事なら、確かに秋子さんにはうってつけだろうけど、
あまりにも大雑把なヒントなので皆目見当もつかない。
「みんなが知っているものを作ってますよ」
…とはいえ、やはり分からない。
「大きいけど、虫眼鏡みたいな拡大鏡で見ながら作ってますよ」
…駄目だ。ギブアップ。
「わかりませんでしたか…」
秋子さんは少し残念そうな顔をして、買い物袋を差し出した。
「じゃぁ、残念賞として、お釣りは祐一さんのお小遣いとして差し上げますね」
そう言って差し出されたものが、「秋子さんの作っているもの」であることに、
俺は最後まで気づかなかった。
財布の中の真新しい2000円札。
秋子さんが嬉々としてそれを差し出した理由も、俺は全然気づかないのだった。
おわり
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