自己紹介の悲劇

作:GLUMip

「普通の自己紹介だったわね」

担任が出ていった直後、がっかりという風に香里が近づいてくる。

「…悪かったな」

普通じゃない自己紹介のつもりだったが、香里にはあまり受けなかったらしい。
反面、驚いた様子だったのは名雪である。

「わたしはびっくりしたよ」
「知らなかったよー。祐一がCIAのエージェントだったなんて」

表情は普段と変わらないが、おっとりとした口調で紡がれるその言葉は名雪なりの驚愕 を示していた。

対する香里は表情を崩さない。

「驚くには値しないわ」

冷たく言い放つその声にはどこか棘を含んでいるような趣がある。

「ただ、一つわかったことは…」

香里は言い淀んで天井を仰ぐ。
そして押し切るように一言。

「これで敵味方に分かれたわね、名雪」

「うん…残念だよ…」

名雪が言葉を受けて頷くのが見えた。
その光景を認めた後、鈍い発砲音を最後に俺の意識はそこで途絶えたのだった。


おわり